広島国際アニメーションフェスティバル二日目(20日FRI)

このエントリーを書いているのは四日目、22日(日)の朝。三日目の朝に二日目の晩のコンペティションの内容をアップしようとするも、二日酔いでダウン(笑)。映像漬けの頭に広島の酒と肴は旨すぎました。回る回る。そんなわけでフェスティバル二日目、20日(金)の様子をこの日付の日記として記しておきます。
コンペの感想の前に、日中に参加したプログラムの様子から。午前中は「ポール・ブッシュ特集」。ポール本人が自作品について語りながら上映というスタイル。直立不動の姿勢、ニコリともしない英国紳士然とした表情で滔々と語る。作品はアーティスティックなカリグラフィー(フィルムを直接引っかいて描くアニメーション技法)から、イラストレーションを撮影したコマーシャルフィルム、実写コマ撮りまで多彩。視覚に対する実験的精神が遺憾なく発揮されており、しかも楽しんで見ることができる。最後から二つ目に上映された作品「Busby Berkeley's Tribute to Mae West」は問題作。人体の部分に対する理解と表現とかなんとか言うだけ言って、ポールが退場後に上映。一緒に来ていた仲間が「スキージャンプペア」の真島監督に伺ったところによると前回のアヌシーでも上映され観客の大爆笑を誘ったとのこと。氏曰く「ち○こ万華鏡」。多くは語らないが、広島の観客は引きつつも押し殺した笑いという感じだったでしょーか。いやー、英国人はやっぱ性格悪いわ(大絶賛)。
午後は「学生優秀作品集1」や「フレームイン(自主制作作品の持ち込み上映企画)」など眺めつつ、今年から始まった企画の「現代日本のアニメーション1」を見た。これまでの大会では日本の作品は歴史的価値のあるものが中心に取り上げられていたので、ある意味ようやくこれをやってくれたか、という感じ。合田経郎(ごうだつねお)監督の「こまねこ」と伊藤有壱(いとうゆういち)監督の「キミはともだち」がお気に入り。95年に制作された淺川順(あさかわじゅん)監督の「バーチャルサーカス」のCGは当時にしてすでにここまで!という完成度。モーションキャプチャも完璧。実写合成のお姉さんのレオタードが生っぽくてなんとも曰く言いがたい良さがありました。
この時点ですでに目は疲労の極に達しながらもがんばって「コンペティション2」鑑賞。

  1. 「ストーミー・ナイト」 (カナダ) ミシェル・ルミユ:淡い色彩の絵本のようなカワイイキャラクター。死についての観念的内容が騙し絵のような夢で描かれる。☆☆☆
  2. 「アドリフト」 (ノルウェー) インガ・リザ・ハンセン:流氷の接岸する荒涼とした浜辺を素材に微速度撮影で制作された労作。潮の満ち退きに自然の力を感じる。☆☆☆☆
  3. 「ザ・レッド・ゲイツ・オヴ・羅生門」 (ロシア) アレクサンドル・タタルスキー、 ヴァレンティン・テレギン:褌姿の日本人がモスクワでスピードスケートレースに出る。わけがわからないがパワーは感じた。☆☆
  4. 「ウクス・ウクス」 (日本) 米正 万也:米正監督のこれまでの集大成+前進と言った趣き。音響とのシンクロがさらに進化。iTunesのビジュアライザを思い出した。☆☆☆☆
  5. 「ループプール」 (日本) 鮎澤 大輝:熱帯の自然描写が美しい3DCG。☆☆☆
  6. 「ロスト・アンド・ファウンド」 (大韓民国) ジョン・シン・パク:単調な生活に喪失感を感じている青年のストーリーはわりかし良い。内容や演出に新海誠作品の影響を感じる。☆☆☆
  7. 「シャーズ・オヴ・デス5:ナウ・ハイヤリング」 (アメリカ) マイク・ウェリンス:3DCGキャラの演技がとても良い。ホラーゲームへの出演面接という設定も楽屋オチ的ではあるけど判りやすくてよい。☆☆☆
  8. 「サウス・オヴ・ザ・ノース」 (ロシア) アンドレイ・ソコロフ:本日もっとも観客が沸いた作品。ボートで漂流する二人のエスキモーが反発しながらも協力する冒険物語。「ごはんですよ」のCMの三木のり平にソックリのキャラクターが絶妙。最高の海洋アクションエンターティメント。☆☆☆☆☆
  9. 「インスティンクト」 (エストニア) ラオ・ハイドメッツ:造物主と人間の関係を寓話的に描いたクレイアニメ。作者はクローンや人工知能に対する考えからこの作品を制作したようだ。悪魔のキャラクターがユニークで楽しい。☆☆☆☆
  10. 「モスキート」 (スイス) アンドレイ・ゾロトゥヒン:蚊と吸血鬼のお話。モノクロの絵とスピーディーな動きが心地よい。蚊のキャラが恐怖漫画の登場人物のようでちょっと怖い。☆☆☆
  11. 「アーツ・デイズ−ダンス」 (カナダ) マルコム・サザランドパステル調の切り絵のようなシルエットが軽快に動く。ところが間違って異なる作品を上映してしまったとか。翌日本当の作品を上映しなおした。日系のプロデューサーが登壇したが寺の住職にしか見えない(笑)。
  12. 「ジ・オールド・フールズ」 (イギリス) ルース・リングフォード:非常に観念的な内容をしっかりと描かれたイメージで表現。言葉がなければ心は感じることはできても思考することはできない、と言ったところか。☆☆☆☆
  13. 「ルイーズ」 (カナダ) アンティア・ルボー:カナダ人の老女の一日の生活をコミカルに描く。蝿の描写に堪らないものがあった。☆☆☆
  14. 「デンジャラス・ウォーク」 (ロシア) エレナ・アヤティヴァ:犬に襲われる人々。繰り返しギャグのテンポが良い。☆☆☆
  15. 「となかいロビー レジェンド・オヴ・ザ・ロスト・トライヴ」 (イギリス) ピーター・ピーク:この作品もアードマンスタジオの流れを汲んでいるのだろうか。クレイの動きは最高。30分の尺の中に登場人物とストーリーを詰め込みすぎた嫌いがある。☆☆☆

とにかくこの日は「サウス・オヴ・ザ・ノース」が最高だった。最終日に入賞してくれればもう一度見られるのだが。