長編小説プロット(2024/06/23)

〇タイトル
『卓上冒険部の小規模な冒険(仮)』

〇ジャンル
青春ミステリ系ライトノベル

〇ターゲット
中高生男子

〇舞台
地方の片田舎、神楽町(かぐらまち)

〇ログライン
主人公がTRPG部のメンバーと共に亡き父親の遺したゲームシナリオの謎を解く話。

〇主要キャラクター
・主人公
十六歳、高一男子。リトルリーグのエース投手だったが肘を壊して野球を続けるか悩んでいる。体育会系の脳筋馬鹿でコミュ力はあるが異性には奥手。TRPGの知識は皆無。
・ヒロイン
十六歳、高一女子。主人公のクラスメート。TRPG歴は小学生時代からと長く、新入部員ながらGMゲームマスター)を務める。
・男子部員
十六歳、高一男子。新入部員。元天才子役という異色の経歴を持つ。TRPG初心者だがキャラクターを演じる芝居は堂に入っている。
・女子部員
十七歳、高二女子。日頃のストレス発散なのか悪ノリプレイで暴走しがち。普段は気遣いのできる陽キャギャル。
・部長
十八歳、高三女子。受験勉強のため一線を退いているがセッションには参加する。GMに慎重な判断を迫る頭脳派プレイヤー。TRPG関係を問わず学内外に顔が広い。

〇プロット
中学野球全国大会ブロック戦決勝。怪我を押して主人公の投げた球が打ち取られチームは敗退する。翌年四月、神楽高校。入学間もない主人公は肘の固定装具について同級生女子(ヒロイン)に尋ねられ野球で肘を壊したと話す。「野球部に入るの?」という問いに答えない主人公。
その一方、TRPG部の雑談で主人公のことを話すヒロインに部長が反応する。部室の書棚の奥から取り出した古びたゲームシナリオには、主人公と同じ名字の人物の名が製作者として書かれていた。TRPG部初代部長の書いたこの長いキャンペーンシナリオ(続き物のシナリオ)は、後半部分が欠落している。探しに行くと宣言する部長。

次の土曜日。主人公の自宅に押しかけるTRPG部員一同。息子に女の子の友達ができるなんてと無邪気に喜ぶ母親。ヒロインの姿を目にとめ何故住所がわかったと尋ねる主人公に、二年生の女子部員が主人公と同じリトルリーグ出身の野球部員に教えてもらったと明かす。部長がTRPG部の者だと名乗り初代部長のシナリオを見せる。「パパの後輩さんたちなのね!」と母親のテンションは一層上がる。訪問目的を知った主人公は、父は半年前に亡くなったと告げる。持病があり余命宣告より長く生きた方だと。
重い空気は母親の明るい声で破られ、そのままにしているという父の仕事部屋に部員たちをあげる。父親のゲーム趣味に興味のない主人公をよそに、小一時間ほどでシナリオ後半が見つかる。顔を出した母親に招かれ、皆で軽食を共にする一同。シナリオの持ち出しを快諾する母親。

月曜日。授業が終わりヒロインに声をかけられる主人公。シナリオの件で家に押しかけたことを謝られる。TRPGとはどのようなモノなのかの話になり、実際に見た方が早いと強引に部室に誘われる。主人公の父のシナリオはまだ始める準備が整っておらず、体験入部に来た別の新入生男子を交えた入門用セッションが始まった。GMはヒロインが務め、主人公は部室の壁を背に椅子に座る。ルールやセッションの進め方を丁寧に教えるGMと上級生たち。飲み込みの早い新入生がTRPGの面白さを理解していく様を見て、少し興味が湧く主人公。初代部長だったという父親にもこんな年頃があったのだろうかという、これまで考えもしなかった気持ちがその後押しをする。帰宅すると最近機嫌の良い母が夕食に父の好物だったカルボナーラを作る。TRPG研とのその後を聞いてくるが、主人公は部室の様子を見ただけだと素っ気なく言う。

数日後、いよいよ父のシナリオのプレイが始まるとヒロインに聞かされる主人公。両親の顔を思い浮かべ自分も参加していいかと聞く。無理にでも連れていくつもりだったとヒロイン。
先日の体験入部の男子生徒は入部しており、部長も併せて計四人のPC(プレイヤーキャラクター)がヒロインの務めるGMで亡父のシナリオに挑戦する。他の部員はすでにPCのキャラクターシートを作成していたが主人公は勝手が分からない。ヒロインはシナリオであらかじめ用意されていたプレロールドキャラクターを使ってみては提案する。本人とは真逆な小柄な少女レンジャーでプレイを始める主人公。シナリオは小さな城郭都市を舞台とした、レベル1キャラクターから楽しめる導入になっていた。周囲のサポートもありなんとか最初のクエスト成功までプレイする主人公。自分ではない誰かがどう考えどう行動するのかについて、はじめて深く考えたと思わず吐露する主人公。部長に正式に入部しないのかと問われ、父親のシナリオが終わるまでの仮の在籍だと答える主人公。

キャンペーンシナリオのセッションも四回目を迎え、シナリオ内の大きな事件の輪郭が見えてきた。現在PCら冒険者たちは自分たちの拠点に町の領主の娘を匿っている。セッションの際にまだ自発的な会話に慣れていない主人公は、使用しているPCのレンジャーが地理知識の技能を持つため簡易な地図を書くマッピングを任されていた。これまでのセッションで書いてきた地図の整理中に既視感を覚える主人公。セッション後にヒロインに話を振り、領主の館と拠点と城郭の位置関係に意見を求める。シナリオ中の冒険の舞台が、いま自分たちが住んでいる神楽町を下敷きにしているのではないかと気がつく二人。

週末。次のセッションに備えるという名目で、駅前で待ち合わせをする主人公とヒロイン。これまでのシナリオのモデルと推測される場所を訪れ確信を深め、次のシナリオでモデルにしているのではないかと思われる場所を確認する。やはり亡父、初代部長の書いたこのシナリオは自分たちの住むこの神楽町をモデルにしている。
シナリオ内でPCたちが拠点にしているアジトと符合する場所には古いアパートがあった。現在主人公の住む家は祖父の建てたもので、このアパートには心当たりがない。父かあるいは当時のTRPG部と何か縁があるのだろうというところまで話し、今日の調査はお開きとなる。

毎週末、セッションの前にシナリオのモデルとなった場所を探訪するのが主人公とヒロインの通例となった。キャンペーンシナリオも佳境に入り、アジト裏の井戸から地下水路に入り、領主の館へ忍び込むというミッションが待ち構えている。先日訪れたアパートの側でもう使われていない空井戸を発見し思わずハイタッチする二人だが、騒ぎを訝しんで顔を出したアパートの大家に見つかってしまう。
複雑な事の経緯を話し迂闊な行為を詫びると大家の老婦人は二人を自室へ招く。大家はこのアパートの一室に高校生のころの主人公の父親が入居していたと明かす。主人公の父は再婚した実父(主人公の祖父)とソリが合わず、また義理の母に遠慮して学生時代このアパートに下宿していたのだと聞く。それでシナリオではアジトなのかと納得する主人公とヒロイン。

長かったキャンペーンシナリオもついに終わり、大団円を迎えた。領主の娘の意に染まぬ縁談から始まった物語は、いけ好かない婿候補の貴族の悪巧みを暴露し、ついでにこの町の地下に眠っていた古代の城跡からお宝を見つけ出し冒険者たちが英雄への足がかりを得る所までに至った。冒険者たちをもてなすパーティで領主の娘は深窓の令嬢らしからぬ料理の腕前を見せ、いく品も手料理を振る舞う。主人公はどの品も母の得意料理だと気がつく。そういうことかと納得する主人公。

視点変更、アパートの大家の回想。主人公の父の部屋は第二の部室のようになっており、部員の出入りが絶えなかった。部員でこそなかったが、主人公の父同様家に居づらい理由のあった主人公の母は皆のアイドル的な存在で、大家の広い台所を借りては玄人はだしの料理を翌作っていた。

視点変更、主人公の母の回想。家にほとんど帰ってこない父親と夜の仕事ですれ違う母親。渡される食費から家族の分まで食事を作っても無駄にする毎日。そんな日々が変わったのは少し偏屈な主人公の父親との出会いだった。

帰宅した主人公は台所の母親に高校で野球を続けるのは諦めたと告げる。「自分で決めたことならお母さん応援するわよ。後悔したっていいじゃない、人生楽しんだ者勝ちなんだから」相変わらず屈託のない母親の言葉に苦笑する主人公。

数日後の部室。父親のシナリオも終わりもう用事はないはずだがつい足を向けてしまう主人公。その姿を普段通りに受け入れる部員たち。机の上に置かれていた父のシナリオをなにげなく手に取る主人公。最初に見たときはちんぷんかんだったが、いまならシナリオの記述をヒロインが広げ、臨機応変にアドリブを加えていたことが分かる。シナリオが終わり最後のページ。作者である父から、このシナリオの読者へ向けたメッセージが綴られていた。
ゲームマスターから達人(グランド)ゲームマスターを目指すきみたちへ。すべての経験がマスターの糧となりプレイヤーの体験に資する。最高のセッションを求めるならば、自分の人生を楽しみ決断し創造せよ!」
人生を楽しみ決断し創造する。それは肘の故障で投手としてトップに立ち続ける道が閉ざされた時に、生前の父がかけてくれた言葉だった。

衣替えの季節。夕暮れの城址公園で話ながら歩く主人公とヒロイン。ヒロインはこれまで存在が知られていなかったキャンペーンシナリオの続編を手にしている。「次は教会で死霊と戦うんだけど……」考え込むヒロイン。あれだろうな、と神社の鳥居へ視線を送る主人公。主人公の手を引いて、神社へと歩みを進めるヒロイン。