衛星映画劇場

エイリアン2 完全版 アルティメット・エディション [DVD]
昨夜の「エイリアン」に続き、今晩は「エイリアン2」。監督はリドリー・スコットからジェームズ・キャメロンにバトンタッチ。「今度は戦争だ!」のキャッチコピーも決まっていて、SFアクション映画としての評判は非常に高い。一作目の神秘性すら感じさせるエイリアンを期待する向きはがっかりだろうけどね。この映画の構造も乙一メソッド*1で分析してみる。

エイリアン2」1986年/米/136分
1章
A:「登場人物、舞台、世界観の説明」

宇宙貨物船ノストロモ号をエイリアンが襲った惨事から57年。ただ1人生き残った2等航海士リプリーは、冷凍カプセルの中で眠りながら宇宙空間を漂っているところを発見された。彼女は会社にエイリアンの話をするが、誰も信じようとはしない。そればかりか、エイリアンの卵を見つけた惑星LV426は殖民が始まっていた。

a:「問題の発生」
(20分経過)惑星LV426との連絡が途絶えた。原因調査を依頼されたリプリーは、宇宙海兵隊員と共に軍事用輸送船スラコ号に乗り込んだ。乗り組員にはアンドロイドのビショップ、会社の人間のバークも含まれている。

2章
B:「発生した問題への対処」

(35分経過)母船を軌道上に待機させ、惑星へ向かう着陸船。上空から見る植民地の建物は無事で電力も通っている。(45分経過)制御室で捕獲されたエイリアンを発見する。建物を探索するうち、家族をエイリアンに殺された7歳の少女ニュートを救出した。(55分経過)大気処理棟に住人の識別信号の反応を見つけ、急行する隊員たち。

b:「問題が広がりを見せ、深刻化する。それによって主人公が窮地に陥る」
(60分経過)大気処理棟で発見されたのは、エイリアンの卵とエイリアンに寄生され繭と化した住人たちの哀れな姿だった。エイリアンとの凄絶な戦いが始まった。中尉の命令ミスも重なり、海兵隊員たちは次々と倒れていった。

3章
C:「広がった問題に翻弄される登場人物。登場人物の葛藤、苦しみ」

(65分経過)リプリーは隊員の救出のために指揮車を屋内に突っ込ませる。幾人か助け出すことはできたが中尉は負傷する。(70分経過)施設を核で破壊しようと提案するリプリー。反対するバーク。その場の海兵隊員の中で階級の最も高いヒックスが核を使うことを決断する。しかし母船に戻るため呼んだ着陸船は侵入したエイリアンによって墜落、指揮車もろとも炎上する。建物の一部に避難するリプリー海兵隊員たち。

c:「問題解決に向かって最後の決意をする主人公」
(85分経過)先の戦いで核融合発電設備の冷却管を傷つけてしまった。間もなく核が爆発する。リプリーたちは母艦から無人救出艇を呼び寄せることとする。ビショップが単身危地にある通信設備まで向かい、手動で救出艇を操作する。(90分経過)バークはエイリアン研究のため、リプリーとニュートにエイリアンを寄生させようと企むが失敗する。会社に対する怒りで一丸となるリプリーと隊員たち。

4章
D:「問題解決への行動」

(100分経過)夜になり建物の電源が落ちる。上下からエイリアンに取り囲まれた。さらに凄惨な戦闘が始まった。(105分経過)ダクトの中をニュートの導きで発着所まで向かうリプリーたち。中尉と女性海兵隊バスケスの捨て身の自爆でなんとか逃げ切ることができる。(110分経過)救出艇が来た。核施設の爆発までに、はぐれたニュートを助け出すべく単身建物に乗り込むリプリー。(120分経過)発信機を手がかりにニュートを助け出したリプリー。しかしそこはエイリアンクィーンの産卵所だった。(125分経過)無事脱出し、母船に帰り着くリプリーたち。あわやのところで核が爆発する。しかし救出艇にはエイリアンクィーンが潜んでいた。リプリーは作業用パワーローダーを着込みエイリアンを宇宙に放り出す。結局、リプリー、ニュート、ヒックス、ビショップのみが生き残った。

一作目に続き、この映画もハリウッド映画のセオリーにのっとって作られている事がわかる。複数の人間を配した群像劇として、脚本の完成度のみ取り上げれば、一作目より上なのではないだろうか。20分、60分、85分時点に物語の変曲点がある。エイリアンたちとの戦いは125分のところで決着がつき、物語は一度終わっている。母船に戻ってからのクィーンとの戦いは一作目に対するオマージュとして作られた物だという事は明白だ。やっぱりアンドロイドは体を裂かれて、エイリアンは宇宙空間に放り出され、リプリーは下着姿にならんといかんのね。

*1:いま付けた名前。幻冬舎のPR誌「ポンツーン」2004年3月号で作家の乙一が明かしたプロット作成法。