ハルヒとアバター

待ちに待ったお休みということで、札幌まで映画を見に行きました。今日は月曜日、ユナイテッドシネマ札幌ではメンズデーの設定のある曜日です。ちょうど北海道ではここでしか上映されない「涼宮ハルヒの消失」もかかっていることだし、朝イチで出かけました。
札幌まで出たついでにみずほ銀行で用を足して、朝9時過ぎには劇場に到着。ハルヒの一映は10時から。13時半のアバターのチケットも買って、早々と座席に着きます。使われているスクリーンは1番。このシネコンで一番大きいスクリーンで、多分北海道でも最大級の大きさの筈。前にここに座ったのはヱヴァ破の時だったな。もぎりで手渡されたのは長門有希の描かれたメモ帳。簡素な作りだけどちょっと嬉しい。



さて、まずは「涼宮ハルヒの消失」の感想から。上映時間170分を越えるこのアニメ映画。結論から言うと大変良くできた映画でした。シリーズものライトノベルの第4巻の映画化ということで、ファン以外には敷居が高いんじゃないかと思ったけど、長い尺を生かした丁寧な演出で事前知識がそれほど無くても楽しめると思います。自分は原作小説の1巻を出版当時の随分前に読んだ程度。テレビアニメも最初の8話くらいしか見ていません(だからギリギリ「笹の葉ラプソディ」のエピソードについては事前知識があった)。たぶん、ハルヒについてネット動画でハルヒダンスを見たことがあるとか、「長門俺の嫁!」なんてネットスラングを聞いたことがある程度の人でも、キャラクターの性格付けになんとなくイメージがあれば楽しめるんじゃないかな。
で、この映画の見所。メガネをかけた長門有希が殺人的にカワイイ!! ここに尽きるのではないかと……。そしてこの部分が成功しているから、彼女の願いを託したある物と、主人公キョンの決断の演出が心に響きます。しかし、いつも冷静沈着で機械的ですらある長門が(というか、そういう「存在」なのですが)、クールでありながらも感情を端々に滲ませる人間らしい描写はたまりません。まずい、これは惚れたわ。
主人公であるキョンは、冬のある日突然非日常の世界に自分が迷い込んでいることに気がつきます。それは高校入学以来、その強烈な個性で自分の学生生活を振り回していた涼宮ハルヒの「消失」した世界。元の世界へ帰還しようと苦心惨憺するキョンなのですが、その中でこの非日常世界がいたって「まとも」であることに気がつきます。自分がこれまでハルヒと共に暮らしていた、宇宙人、未来人、超能力者が闊歩する世界のでたらめさを自分は嘆いていなかったか……? それに対する答えを出す様がこの映画のドラマツルギーを支えています。そしてそれには、突飛で空想的なことなど起こらないけど地に足の付いた現実を選ぶのか、楽しければそれでいいんだと割り切ってしまうのかという問いが被さってきます。これはライトノベルやアニメのような架空の物語を楽しんでいる観客にも投げかけられている問いのようにも思え、なかなか興味深い演出となっています。そして、この映画のダブルヒロインとなっている長門ハルヒのどっちに魅力を感じるかによっても、映画の印象は変わってくるでしょう。
まあ、そんなことを考えなくても、高校時代などとうの昔に過ぎ去った自分のような世代にも、十分学生気分が楽しめる青春映画として一級品の魅力を持っている作品です。ユナイテッドシネマでは、2回観に行くとフィルムしおりをプレゼントしてくれるキャンペーンをやってるみたい。月末あたりにもう一度観に行こうかなあと思わせます。あ、あと冬の季節のお話なので、寒いこの時期に観るのがやっぱベスト。
ところで、やっぱりこの作品は映画「ビューティフル・ドリーマー」を意識しているのかな。いま思春期で、この「涼宮ハルヒの消失」に出会った若い人は幸せだななどと思ったりしました。



昼食休憩を30分はさんで、13時半からすぐ次の上映。今度は「アバター」を見ます。こちらは中規模のスクリーン。この映画のウリである3D上映にも対応していません。まあいいんです。1000円で観られるんだから。ところでアバターというとウルティマIVを思い出すのは結構年季の入ったPCゲーマーくらいでしょうね。アバターというかアバタールか。当時リアル中坊だった自分には難解なゲームだった……。
それはさておき、ハルヒに続きこちらアバターも170分超の大作。とはいえ、だいたいのストーリーや世界観はこれまでふんだんに打たれたパブリシティーでだいたいわかっているような気にすらさせられます。メディアに露出しすぎ。それでも観に行くんです。キャメロン映画はやっぱり好きだから。
惑星パンドラの大自然と、原住民ナヴィ族の紹介にまず1時間。主人公がアバターと呼ばれる仮の肉体(ナヴィ族のDNAを持っている)で潜入したナヴィ族に感情移入し始める中盤から結末までの怒濤の展開は、王道にして鉄板。人権意識のかけらもない利益至上主義の企業と、その走狗に成り下がった海兵隊の悪役っぷりは爽快なほどです。
それにしてもキャメロンはバトルシップとパワードスーツの見せ方が上手い。強靱な肉体を駆使した、ナヴィ族のスピーディーな戦いも格好いいけど、海兵隊の面々が出撃するたびにアドレナリンがほとばしるわー。このアクションシーンだけでも十分楽しめます。
あとテーマ的な部分だけど……アメリカ映画だけに、ネイティブアメリカンとの歴史的な問題は想起せざるをえないのでしょうね。人間ですらない異種族をあれだけ魅力的に描いたという時点で、この映画の立ち位置は明確なのでしょうけど。他者どころか人種も生物種すら異なる相手とのコミュニケーションをファンタジックにならない程度に夢を持って描いているのはいいなあと。
このへん、どうしてもナウシカを想起させる部分でもあります。王蟲との心の交流、自然の怒り……などなど。それ以外の細々とした設定にも似通ったところが多いです。人間がマスク無しでは呼吸できない大気、獰猛な生態系、森では動物に対して銃を使ってはいけない、好戦的な族長の娘、知性を持った非人間型の生命……ざっと思いつくだけでこのくらい。まあ、この辺は似たテーマのSFではよくある要素ではありますが。日本人にはナウシカが特に馴染み深いからオーバーラップしてしまうかも。
キャラクター造形やストーリーはわかりやすすぎて、映画に解釈の深みのような物を求める人には食い足りないかもしれませんが、それでもこの長い上映時間を一片の無駄もなく使い切った演出は隙がありません。ラブロマンスとしてもしっかり成立しているし、広く観客に受け入れられる映画としての器の大きさを感じました。