MIT研究者Dr. Josef Oehmenによる福島第一原発事故解説

奥歯にモノの挟まったような原子力安全・保安院東京電力の会見ではなにがなにやら……という方、下記リンク先で非常に冷静かつ的確な事故解説が読めます。


MIT研究者Dr. Josef Oehmenによる福島第一原発事故解説
http://news.livedoor.com/article/detail/5414245/


翻訳にやや癖がありますが、福島原発の状況とこれまでの大きな原発事故との違いを説明してくれています。私はこれを読んでようやく今回の事故の大筋をつかむことができました。


 ※


時間のない方のために、ポイントを以下にまとめます。


1.
地震後数分で制御棒が挿入され、その後今に至るまで燃料棒の「核分裂」は停止している。今後たとえ放って置いたとしても再度核分裂に転じることは機構上ありえない。チェルノブイリはこの核分裂反応が異常加速しそれを止められなかった事故なので、性格が全く異なる。


2.
現在熱を発しているのは、核分裂を停止した燃料棒の「崩壊熱」。燃料棒の中のウランは核分裂を停止しているが、これまでに分裂したウランが崩壊する中で生成する中間放射性元素が、さらに崩壊して安定していく過程で出す熱がまだ残っている。


3.
崩壊熱は本来の核分裂が出す熱の3%程度の物でありそれも時間とともに冷えていくが、地震津波と停電により冷却機構が機能不全に陥りその程度の熱であっても効率的な冷却を行うことが困難になっている(天災と人災の違いはあるが、スリーマイル島の事故とほぼ同じ状況)。


4.
現在外部から冷却剤(真水・海水とホウ酸)を入れて対処しつつ、原子炉の容器に負荷がかからないように、非常用のバルブから中の蒸気を逃がしている(正常な状態であれば、この蒸気は回収して冷やして水に戻して再度冷却に用いる)。
この蒸気は水蒸気と水が分解されてできた「水素」と「酸素」の混合物。当然のことながらこれはよく燃えるため、原子炉の外で建屋を吹き飛ばした爆発の原因となった。


5.
外の大気中に逃がしている蒸気は放射化している。その為、原発の周囲の地域では放射線が観測される。しかし、この放射化した蒸気中の全ての放射性同位体は、短期間観測された後数分レベルですみやかに崩壊する(原発敷地内で観測された放射線の値がすぐ上下するのはこのため)。


6.
現在、格納容器からごく微量の中間放射性元素セシウムヨウ素)が漏れ出ていることが観測されている。放出している蒸気と共にこれらは大気中に拡散している。しかし、今の状況で蒸気と共に大気に放出されている程度の量では、健康被害をもたらすほどの人体内での蓄積は起こらない(炉心溶融を起こし大量の蒸発した冷却剤を放出したスリーマイル島の事故でも、被曝は0.01〜1mSv程度であり、住民や環境への影響はほとんど無かったことに注目)。


7.
現在もっとも問題となっているのはこのセシウムヨウ素の漏出が原子炉のどこで起きているのか、それは拡大する可能性があるのか、という点。しかし冷却を続けている限り数日で崩壊熱はおさまるため、今後事態が悪化する可能性はほぼ無い。大きな余震が怖いですが……。


とか書いていたら静岡東部でM6.0の地震浜岡原発大丈夫だろうか。