長編小説企画書(2024/02/25)

■タイトル

『野蛮人のメソッド』

 

■対象読者

中高生男子

 

■新人賞投稿先

電撃小説大賞」もしくは「講談社ラノベ文庫新人賞」

 

■ジャンル

異世界転生デスゲームもの

 

■テーマ

社会が自分を縛っているとしたら、それは自分から社会のルールに縛られるように望んだ結果だ。

強い意志とプライドをもって、己の人生を取り戻せ!

 

■ログライン

種族ごとに分割統治されている異世界に転生した主人公が、己の意思に忠実に生きる「野蛮人」と出会い、思う事を成す自由意志を手に入れて異世界に革命を起こす話。

 

■あらすじ

平凡な境遇の男子高校生だがゲームでは世界ランカーを誇る主人公。ゲーム内で出会った人物に誘われ、最新式VRゲーム機のテストプレイヤーになったところ、機械の誤作動で脳を破壊され死亡する。

 

意識を取り戻すと隠り世の女神に転生先の選択を迫られ死を認識する。主人公は生前本当に生きていると感じていた、ゲームと同様の世界への転生を希望する。

 

人間(ヒューマン)の赤子として新たな生を受けた主人公だが、直後に機械人間(ドロイド)に村が焼き払われる。母親が身を持ってかばい唯一生き残るが、瀕死のところを旅の野蛮人(バルバロイ)に拾われる。野蛮人は聖剣に主人公の魂を入れ替え命を救う。

 

主人公が異世界転生したことを話すと、よくある事として受け入れる。この女性のバルバロイはヒューマンとして生まれたが、寿命を持たず不老の存在。その孤独から漂泊の旅を続けている。

 

この世界は機械人間によって分割統治されている。ヒューマン、エルフ、ドワーフの各種族は三すくみで互いに反目しているため、連帯して機械人間に反抗することはなかった。また、種族内でも階級差別があり、主人公の転生した村はヒューマンの社会から放逐された無国籍者の集団で、機械人間が狩りの対象としても誰からも非難されない存在だった。

 

野蛮人は剣の姿となった主人公と共に、モンスターに襲われていたヒューマンの少女二人を助け治療する。しかしそれは機械人間が遠隔操作している奴隷種族(サーヴィタ)の模造体だった。

 

安全にゲームとしての狩りを楽しんでいた機械人間は、模造体を捨て意識を機械化都市の本体へ戻そうとするが障害が起きて帰れない。機械人間は都市へ帰還するまでの護衛を主人たちに命令する。少女のうち一人は支配階級の娘だったが、もう一人は彼女に仕える奴隷と分かり、護衛を引き受ける主人公と野蛮人。

 

当初は支配下のヒューマンですらない野蛮人を下に見ていた機械娘だったが、ヒューマンとさして変わらないサーヴィタの体で苦難を共にするうちに、差別をする根拠など無いのではないかと自問自答するようになる。

 

機械化都市に着いたものの、サーヴィタの姿では身分の証を立てられず主人公たちと共に拘留される機械娘と奴隷娘。そこに機械娘に仕えていた他の奴隷が、鋭敏な嗅覚を頼りに助けに来る。その手引きで都市の地下にある奴隷種族の居住区に匿われる。

 

都市では政権を取った奴隷解放派と守旧派の争いが起きていた。政治家の子息だった機械娘が元の体に戻れなかったのは、守旧派の行動に規制がかかったためだった。

 

政治は不安定だったが種族代表戦が開催される。これは二年に一度、各種族の代表同士が争い、より多く勝ち進むほどに出身種族の待遇が良くなるという代理戦争だった。機械娘は足がつかないように原始的な紙の手紙を用いて、サーヴィタも他の種族と同様に代表戦に出られるように政治家の父を動かす。

 

(ボリューム的にはここまでで前半)

 

既存の三種族に加え、奴隷として人権を持たなかったサーヴィタが身分の解放を賭けて代表戦に出場する。代表者は各種族から三名まで出場でき共に行動する。野蛮人(と剣の姿の主人公)をリーダーに機械娘と奴隷娘が代表となる。

 

代表戦の舞台は都市の地下深くに広がるダンジョン。かつては地下都市として機能していたが、いまやコントロールを失った建築ロボットが無軌道に改築工事を繰り返し、モンスターが独自の生態系を作っている。ダンジョンでの様子はドローンが撮影し地上のコロシアムに映し出される。

 

勝利条件は最奥の管理室にたどり着き工事中止命令を発令することだが、これまで数百年以上にわたって成功者は無く、ダンジョンから離脱すれば失格、一番最後まで生き残っていた者が優勝となるのが慣例だった。

 

ヒューマン、エルフ、ドワーフ各種族の代表者は、相手を出し抜き、ことによっては殺害することで手っ取り早く勝者となる戦略を取ってきた。しかし、新参のサーヴィタを狙い三種族が一時的に結託したことで風向きが変わる。

 

サーヴィタ代表の野蛮人に打ちのめされた各種族の勇者は、管理室に到達するまでの条件付きで野蛮人をリーダーにパーティを組む。凶暴なモンスターと戦い、建築ロボットが意味も無く設置したトラップをかいくぐるなかで、種族間の対立意識が機械人間によって操られていたものだと感じ始める一同。

 

全員が命を落とすこと無く、ついに管理室にたどり着く。ここで勝者を決める戦いが始まると思いきや、撮影ドローンに向かって野蛮人が機械人間たちに宣戦布告する。建築ロボットの管理権限を掌握した野蛮人は全ロボットを地上侵攻に差し向けると脅す。手始めに都市中央の議会議事堂が地中に崩落する。

 

休戦協定はサーヴィタ居住区画の大会堂で取り交わされた。サーヴィタが機械化都市で労働力として働く現状はしばらく変わらないが、労働者としてダンジョンと建築ロボットの管理権はサーヴィタに委譲され、協定違反があれば戦闘は再開される。

 

機械娘は元の体に戻らず、サーヴィタの姿のままで機械人間側の全権大使に就任した。奴隷娘はその補佐官。人間の肉体を手に入れた主人公は、体を持った状態であらためて仲間たちと祝杯をあげる。

 

おわり

 

■工夫と見所

ゲームとして異世界の知識を持つ主人公と、サバイバルの実体験と古い歴史に詳しい野蛮人の掛け合いで、無理なく作品世界に導入し読む際に敷居を下げる。

 

機械人と支配されている各種族、機械人と奴隷種族、ヒューマン、エルフ、ドワーフ間の関係と、複数の対立を描くことで絶対悪や善と悪の二元論に陥らないリアルな価値観の描写をおこなう。

 

プロットでは言及していないが、ヒューマン、エルフ、ドワーフの各種族の抱える問題を、パーティを組んで共に戦う中で野蛮人と主人公が解決し、パーティを結束させる導き手となる展開。

 

ヒューマンの抱える問題は歪んだ宗教による倫理観の欠落。エルフの抱える問題は高齢化し活力を失った社会。ドワーフの抱える問題はモノと階級への執着による盲目的な文化(ブラック企業的な)。サーヴィタの抱える問題は奴隷としての苦難。機械人間は一見文明を享受しているように見えるが、支配者としての驕りから文明が停滞しほころびだしていること。