「魔女 第一集」小学館 五十嵐大介 ISBN:409188461X

イスタンブールを舞台にイギリス人魔女と遊牧民の少女が邂逅する「SPINDLE」と、インディオの少女呪術師と部族の森に白人を導いた老呪術師の闘争を描く「KUARUPU」の二篇を収録。エンボス加工されたカバーの手触りは若干安っぽくもあるが、五十嵐大介の緻密な絵の雰囲気にはあっている。何年か経っていいかげん紙がくたびれたところで、喫茶店の本棚で手にとると良く手に馴染むかもしれない(などとわかりづらいたとえ話)。話の内容については衒学趣味的な部分と登場人物の動機が上手く融合していて過不足を感じない。五十嵐大介の魅力はなによりその達者な絵にあるが、ストーリーテラーとしての円熟味も感じさせてきた。諸星大二郎の正統な後継者といえるのではないだろうか。三八頁の魔女ニコラの妖艶な笑み、一七〇頁の精霊の世界の圧倒的なビジョンが白眉。巻末に収められた書き下ろしの掌編「騎鳥魔女」は、「はなしっぱなし」のような軽くても深いところに落ちる読後感。濃密な味の本編のあとの爽やかなフレーバーティーの趣き。