「新現実 VOL.3」角川書店 ISBN:4047215112

昨日病院の帰りに新札幌の丸善で買ってきた。表紙は大嶋優木。「わたおに」の造型師はイラストも達者なのね。ロリコン同人誌の商業アンソロジーと、気合入れてDTP入稿した大学漫研の会誌を足して二で割ったような印象のデザイン(わかりづらい)。西島大介のマンガ「夏の彗星」と元長柾木の小説「飛鳥井全死は間違えない」だけ目を通した。前号のVOL.2を引っ張り出してみると次号ではライトノベルの特集を予定、とある。どうもそれは中上健次の遺稿の第一話掲載という形で落ち着いたらしい。意表を突かれたし、まだ読んでいないので意図がつかめないがメタ小説というくくりで捉えておけばよいのだろうか。
「夏の彗星」はファーストコンタクトもの。少女とトトロ風味の宇宙人の出会いには夏の空気がふさわしい。
飛鳥井全死は間違えない」、タイトルを一読してブギーポップを思い出してしまった。かの作品に登場する飛鳥井仁(提案者)というキャラクターとタイトルの発音から「ブギーポップは笑わない」を想起したせいだろう。A5版の雑誌で小説だけ四段組のレイアウトは読者に対する嫌がらせだろうか。立ち読み防止の効果は期待できるかもしれない。ゲームのシナリオライターとして高名な元長氏だが、彼のテキストを読むのは(ウェブ上の日記やエッセイなどを除くと)はじめて。登場人物は世界の認識の仕方でバトルをするスタンド使いといった趣き。個々の持つ世界をひきずり出すためのジャーゴンをフックに、前哨戦は口喧嘩が続く。肉体的な闘争は結果がわかっているけれど一応形にしとけやいう印象。テキストが先行してビジュアルが結末に来るという、ビジュアルノベルの定石に従っているということか。作中ではたしかに飛鳥井全死は「間違えない」のだった。