「機械仕掛けの蛇奇使い」上遠野浩平 メディアワークス ISBN:4840226393

裏表紙の折り返しにもあるように、「虚無を心に蛇と唱えよ」のタイトルで電撃hp specialに発表された作品のリライト。裏表紙折り返しの作者言でも言及あり。

この本になるまで七ほどバージョンがありまして、最初の題は「スーパーマジック・ハイパーマシーン」といいました。

これがブギーポップでデビューする前の習作のタイトルなのかな。この本をリーブルなにわで買った後、時間つぶしで入った札幌駅ステーションデパート(って今でも言うんだっけ)のプロントで2章まで読み、さきほど最後の7章まで読み終えた。一度別バージョンを読んでいたということもあるが、あいかわらずリーダビリティは高い。各キャラクターの動機付けがしっかりしたせいで、読んでいてキャラクターの行動に疑問を感じてつまづくということも無くなった。特に実質上の主人公と言って良いルルド・バイパーの設定とキャラクター描写がより深化したのは良かった。それにともなって作者の「ナイトウォッチ三部作」シリーズなどと設定上の結びつきも強化されている。この辺は他の作品も読み込んでいるファンへのサービスと取るべきだけど。作中で「詠韻技術」と呼ばれる魔法の描写に正直新鮮味は感じないが、こうした架空の技術を使って理詰めで登場人物達の行動を組み立てていく手法は好ましい。エピローグは「虚無を心に蛇と唱えよ」と少し変えられている。僕はこちらの方が甘くて好きだ。(22:00)