「虚無を心に蛇と唱えよ」 上遠野浩平 メディアワークス発行 電撃hp Special収録
2002年の9月に発行された雑誌の増刊号に収録された、単行本未収録長編。昨日アソビットシティの書籍売場で手に入れた。版元から取り寄せでもしようかと考えていたところだったので、都合が良かった。ファンタジー色の強い未来世界で少年皇帝と太古の女魔法使いが帝国の命運をなんたらという、悪く言えばありがちな作品。(2ちゃんねるのスレで読んだ)話によると作者のデビュー前の習作であるらしい。文章に独特のスタイリッシュさが薄かったり、話の展開があまりにもご都合主義なのもむべなるかな。徳間デュアル文庫から発行されている「ナイトウォッチ三部作」の世界(蛇足だが挿絵は中澤一登ナージャとは全然絵柄が違いますが)の科学文明の遺物が登場したり、「ブギーポップ」シリーズでお馴染みの合成人間が出てきたりと上遠野浩平の作品世界のベースはすでにできていたらしい。というかこの人も一つの世界観を後生大事に使いまわす作風である。登場人物が世界の真相に対して向かっていくという構造も同一であり、セカイ系作品としての考察の鍵になるのかもしれない(誰かもう書いてるかな……?)。電撃文庫の新刊予定によると4月10日の発売予定に「機械仕掛けの蛇奇使い」とあるのは、どうも改題したものらしい。いまさら若書きをそのまま出してくるとは思えないのでリライトされていることを望む。(16:10)