「審判の日」角川書店 山本弘 ISBN:4048735438

審判の日
山本弘の最新作5編を収めた短編集。そのうち4編が書き下ろしなのだから、ファンなら買うべきだろう。とはいえ5編の中で一番読み応えがあるのはSFマガジンに掲載された「時分割の地獄」。人工知能モノとして、これは掛け値無しに傑作。先日ある短編新人賞に応募した作品とアイディアで被っている部分があったのにヒヤヒヤ。この作品を先に読んでたら、絶対影響受けちゃってたよ。書名にもなってる「審判の日」は、突然世界から人が消えるという人体消失を扱っている。僕はこの手の話が大好きで、古くは小松左京の「お召し」(64年)や「こちらニッポン… 」(75年)から、比較的最近だと洞沢由美子の漫画「D[di:]」(89年)などが記憶にある。主人公達以外人類が死に絶えるということなら、楳図かずおの「漂流教室」(72年)や、菊地秀行の「風の名はアムネジア」(83年)、望月峯太郎の「ドラゴンヘッド」(95年)なども含めてもいいかもしれない。
僕はこの瞬間に世界が滅びてしまったらどうなるだろう? と妄想することがよくある。地下鉄に乗っているとき、この車両だけが人類の死に絶えた超未来へ飛ばされたら……なんてことをこれまで何度考えたか知れない。これがほかの人にもよくある妄想なのか知らないが、少なくとも上にあげた作品の著者と登場人物にシンパシーを感じる。いま気付いたけど、マイ・オールタイムベストムービーの一つ「ビューティフル・ドリーマー」も人類消失モノの変奏の一つなんだよな