「季刊 読書のいずみ 2004年春号」全国大学生活協同組合連合会

なにげに乙一氏の動向を追いかけているこのダイアリー(じゃなくて今日だけははてなブログなんだっけ)。大学生協で無料配布されている冊子に乙一の対談が載っていると聞き、ススキノまで飲みにいくついでに北大生協に寄ってきた。今朝北大の夢を見たのもなにかの先触れかもしれない。僕が通っていた頃はクラーク会館という建物にあった生協の書店が生協の本館2階に移動していた。広さは似たようなものかなー。授業はまだ始まっていないと思うけど、今期の教科書を求める学生達でかなり賑わっている。奥の方の注文受付などのカウンターの方に10冊くらい置いてあるのを発見。無事に1冊保護。そのまま鞄に入れて持ち帰るのも大人としてどうかと思ったので、なにか面白い本は無いか書棚を見て歩く。それほど棚が多いわけではないけれど、大学生協独特の品揃えが楽しい。「人類最高の発明アルファベット」ジョン・マン 晶文社 ISBN:4794966059 を一緒に購入。間違ってレジに2冊とも出したらアルバイト店員の娘が「読書のいずみ」の方の価格がわからなくて頭をひねっている(笑)。さて対談の内容。大学生の男女二人が乙一氏にインタビューを行うという形の対談。ハタチそこそこの学生の乙一作品との出会いなど語られて、インタビュアーの発言部分もなかなか興味深い。僕はなんだっけ。デビュー作の栗本薫氏の選評は覚えているな。でも当時「夏と花火と私の死体」は読んでなくて、ザ・スニーカー羽住都氏のイラストに惹かれて読み始めたんだっけ(その時は作者が高校生でデビューしたあの乙一とは気づいていなかった)。対談の1ページ目。金髪の乙一とインタビュアー二人の写真。三人とも眼鏡ってのがらしいといえばらしい。対談の分量は結構多く、話題はなかなか多岐にわたっている。大学の理工学部時代、小説を書いている事が論文に結構役立ったなんて言っているのは本気なのだろうか。大学生協の出版物向けのリップサービスという気もする。でも教師にしてみれば学生の論文に新しい発見など皆無なわけで、内容が陳腐なのならせめて読んで面白いということは重要だったりして。一般文芸では作家は割と神聖視されていて、ライトノベルの方では発言権を編集者が持っている一方、作家を育てている部分もある、という発言は重要。これまでもライトノベル出身で一般文芸の方へ活動の舞台を変えた作家は多くいたが、ここまで具体的な発言は珍しいのではないか。「さみしさの周波数」はタイトルも自分の意志が通らず心がささくれだった、とも語っている。当時乙一ザ・スニーカー誌で「切な系」みたいな売り方をされていたから、それには抵抗があったのだろうか。それならこの「読書のいずみ」の表紙のリーダーに「切なさの達人、現る」とあるのはいかがなものか(笑)。対談の最後ではやはり映像作品を作る事への興味を吐露している。対談中のコラムにある構想を引用する。

つい最近まで、目の見えない人と、耳の聞こえない人と、言葉のしゃべれない人の三人が、東京まで旅に出るロードムービーの話を考えていました。お互いに助け合いながら、田舎から東京まで行くという設定です。今、保留中なんですけど。

どうだろう。乙一にしては凡庸な発想のような気もするが、乙一ならではの切り口の予感が本人にはあるのだろうか。(24:50)