きょうのできごと

午前中はひどく鬱々としていた。何も手がつかず、2ちゃんねるのオカルト板で「死後の世界はほんとうにありますか?」とかそんなスレッドを見ていたら、自分も首を括りたくなったので、気晴らしに出かけることにした。
僕の住む江別市というのは、隣の札幌市から伸びる国道と、併走する鉄道に沿って細長く街並みが続いてできている。札幌から見て路線の左側が商業区画と住宅地で、右側には広大な敷地を生かした大学とか農地とか工場とか、そんな景色が続いている。空が広いのが取り柄だが、自転車で移動するには風が強すぎる。向かい風の中、国道沿いの書店に向かった。
この街で一番売り場面積の広い新刊書店とはいえ、店の三分の一は文具売り場で、本の半分以上は漫画と雑誌である。雑誌と漫画単行本の新刊をチェックしたら何も見るものは無く、未練たらしく文芸新刊の棚など見てみたが、いまだに「Deep Love」が平積みになっていることに眩暈を覚え店を出た。
そのまま隣の古本屋に寄る。売り場面積だけならこちらの方が広い。活字の本の充実度は3倍ほどだろう。中島らもの「僕にはわからない」という本を文庫で見つけた。いまの僕の心境にはピッタリだと思った。レジに持っていくと105円だった。先ほどの新刊書店の裏にあるモスバーガーに入り、アイスカフェラテを注文して角の四人がけのテーブルに着いた。ここは店内のレイアウトにゆとりがある上、なぜかいつ行っても混んでないので助かる。
文庫本を開くと、「僕にはわからない」は短いエッセイをまとめたものだった。どこから読んでもいいのだが律儀に頭から読んだ。一つ目「宇宙のほんとのとこはどうなってるか」。なるほどと思った。二つ目「ミクロとマクロについて」。落語の「頭山」と心脳論の関係について、ついこの間考えたばかりだったので、同じようなことが書かれているのに驚いた。三つ目「人造人間は泣くのか?」。人間の“自我”は“妄想”だ……そうだね。四つ目「人は死ぬとどうなるか」。個体の死から生をさかのぼっていくと、そこには命の樹形図が海のように広がる。蒙が開けた。怖くなって本を閉じて、自転車に乗って家まで帰った。文庫本の続きはまだ読んでいない。