蝦夷梅雨とも言うけれど

ちょっと憂鬱な感じの雨。図書館貸出し図書の返却期限が今日までなのだけど、午後から晴れるだろうか。「デイ・アフター・トゥモロー」も観に行きたいんだけどな。朝食はトーストとベーコンエッグ。苺を少し。最近酸っぱいものがどんどん苦手になってきている。もとより柑橘系の果物は好きではなかったし。でもグレープフルーツジュースだけは意識的に飲むのは、乳酸の分解に効果があると聞いたからか(たぶん漫画のパイナップル・アーミーから仕入れた知識)。

「殺殺草子」平和出版 駕籠真太郎 ISBN:486056099X

タイトルは「ころころそうし」と読む。二週間かけて「家畜人ヤプー」を読み終えたところで、同じく人体改変ネタ満載の同書が発行されたのも何かの縁か。駕籠真太郎の場合軍国物でも共産物でもSF物でもエロを目指したものでも、とにかくグロテスクな人体改変と際限なく増殖するパラノイア的妄想がギャグとして散りばめられている。臓器の描写や悪意に満ちた視点に嫌悪感を示す人には薦められないが、乾いた絵柄と論理的なギャグ構成と相まって残酷さはほとんど感じない。短編を多く物している駕籠氏としては珍しく、一本の長編として完結している本作。「超伝脳パラタクシス」ISBN:4087826724 同様読み応えは十分。天明の大飢饉を「人体徴税」で乗り切った天外藩。率いるは怜悧なサディストの沙霧姫。前半は人体徴税と地獄テーマパークというネタで引っ張るが、毛根を自在に操る毛根忍者が登場する後半からのドライブ感がたまらない。自在に針のような剛毛を生やして敵を倒したり、切断した手足の代わりに鞭のような毛を移植したりやりたい放題。なんというかあのキューティクル感も良い。巨大毛根といえばむかーしのログインで水口幸広が描いた漫画を思い出す。TRONの父、坂村健教授を揶揄した内容だったと思う。ぶっとい毛髪一本だけの人物が出てきて、その毛が抜けるともう脳味噌がじかに見えちゃってる(この人物のモデルも居たように思うが失念)。坂村教授が彼を追いかけるうちに、転んで脳髄をぶちまけて死亡……みたいな内容だった気が。いまだに肩とかに「ひょろ毛」を見つけるとこの話を思い出してしまってちょっと気持ち悪くなったりする。
(追記)スキャナで取り込んだカバー写真のタイトル文字などが目立たないのは、シルバーのインクで刷るという凝ったことをしている為。実物のカバーはもっとコントラストの高い目立つものです。

「ライドバック」講談社 カサハラテツロー ISBN:4091884717

昨日購入した漫画単行本の二冊目。学生運動が再度活発化している近未来の日本。有名ダンサーの愛娘として非凡な舞踏センスを持つ主人公が入学した大学で出会ったのは、二輪車型ロボットだった。昔の大野安之藤原カムイの雰囲気を足して二で割ったという印象。無骨だけどひょっとしたら合理的かもと思わせる二輪ロボット「ライドバック」のデザインは文句なくカッコ良い。アクションフィギュアが出たら間違いなく買ってしまいそう。というか変な車輪付きノリモノマニアとしては、是非各メーカーに実現化を熱望したい。この漫画に感銘を受けた理系高校生が工学部受けてメーカー入ってプロジェクト立ち上げて……十五年も待てば何とかなるか(笑)。おお、舞台設定の二〇二〇年とも符合するではないか。そのころ僕は四十台半ばか……いやバイク乗りとしてはまだまだ現役だな。今から体鍛えておこう(オイ)。カバーを外すと表紙背表紙に番外漫画「ひしだ君劇場」もあるので要チェック。
この本のオビには掲載誌の「IKKI理系COMIXフェア」*1の告知がある。対象となっている本のうち五月発売のもう一冊「ナツノクモ」(篠房六郎)は既に買っているから、来月もう一冊買えばフェアに応募できるな(抽選でサイン入り額装イラストがプレゼントされるそうだ)。「魔女」(五十嵐大介)も含めて、最近IKKI連載作品の単行本を買うことが多い。「G戦場ヘブンズドア」もそうだな。IKKIは雑誌を買う気はしないけれど、単行本になったら読みたい作品が載っている。反対にコミックビームヤングキングアワーズは雑誌は欠かさず買うけれど、単行本を所有したいという気が起こらない。「銭」(鈴木みそ)で描かれていたように、漫画雑誌単体での採算分岐点に到達するにはかなりの部数を出さねばならならず、こうしたマニア向け青年誌では雑誌だけでは経理は赤くなりがちだ。一方単行本は販価に対する原価の比率が低く、数万部以上売り上げるヒット作が出れば後は札束を刷っているようなものだという。そーゆー意味ではIKKI編集部の商売は上手いのかな〜などと思ってしまう。雑誌や編集部に対する愛着では、ビームやアワーズのほうが遥かに上なのだが。情報財の収益はやっぱ理不尽かも……。

「デイ・アフター・トゥモロー」2004年/米/124分

図書館へ行くついでに観てきた。もう通い慣れてきたワーナーマイカルシネマズ江別。併設のショッピングセンターのカードを作ると300円引きなのでこれもサクッと申込みしといた。でも無業者はクレジット機能の使えないカード。いいのさ、個人情報と引き換えに割引だけ受けられれば。以下感想。例によって若干のネタばれは含むけど、未見の人が読んじゃってもあまり関係ないかな。この映画については。

予告編でもテンコ盛りだったスペクタクル映像がとにかく凄い。マンハッタンを呑み尽す大津波の迫力はディープ・インパクト(1998)を完全に超えてる。冒頭に東京、千代田区とテロップの出る映像があって、説得力のまるでない映像はそこだけかも(笑)。インデペンデンス・ディ(1996)&ハリウッドゴジラ(1998)のエメリッヒ監督だけに、オタクが世界を救う的なくすぐりはそこかしこに。でも今回の敵は一万年に一度の自然災害。人間側が不利極まりない。というか今作では人類、もといアメリカ国民は救われません。ほぼ日本沈没(1973)状態。主人公の古気象学が専門のセンセイも、後半は息子を救うためだけに頑張る正統的ハリウッドマッチョな人物になってしまっていてちょっと残念だった。その代わり遥か高みの雲の視点や、宇宙ステーションから見た地球の様子が効果的に挟み込まれていて、真の主人公はあくまで大災害だということが印象づけられる。とにかくスケール感の巨大な映像が命の映画なので、よほど大画面のホームシアターを持っている人以外は映画館に足を運んだほうがいい。テレビで見ると価値が半減する映画の典型。メインの家族愛のストーリー展開は弱いのだけど、いくつかジーンとくる枝エピソードがあったのが良い。ゴジラでは怪しげなフランスの諜報員をジャン・レノが演じていて萎え萎えだったのを反省したか、今作の重要な外国人役のスコットランド人気象学者をイアン・ホルム*1が好演。こんな胆の据わった上司は理想だな〜。最期の時にシングルモルトで乾杯というのも泣かせる。あと、マンチェスター・ユナイテッドに乾杯! 氷に閉ざされたニューヨークから運び出せた文化物はグーテンベルクの四十二行聖書だけだったというエピソードも個人的にはツボに入った。聖書の是非は置いておいて、人類がやり直す局面に至って最古の印刷物より後の文明は役に立たなかったのだから。そんなわけでヒューマンドラマとしての出来や、ディザスター映画としての文明批判などを求める向きにはお勧めできません。エメリッヒとしてはこれでも頑張ったほうだ! そのかわりILMを筆頭としたSFXチームの映像は素晴らしいの一言。特に北海道北部で生まれ育った自分も納得の痛そうな寒さの表現は出色の出来。エンパイアステートビルが天辺から凍り付いていく映像なんてこれまで見たことがない。何も考えず寒さを体感していただきたい。

図書館に向かった正午頃に雨は上がっていたのだけれど、映画館に入った午後一時頃にはもう一雨来ていたらしい。道理で映画の冒頭二十分ほどはひどく眠かった。気圧がグッとさがると一緒に眠気を催すという体質はなんとかならないものか。映画を見終えたころにはパッチリ目も冴えていました。空はきれいな夕焼け。穏やかな気候というだけで幸せを感じるなあ。

*1:指輪物語ビルボ・バギンズ。もちろん今回はあそこまで背が低くない(w。