「殺殺草子」平和出版 駕籠真太郎 ISBN:486056099X

タイトルは「ころころそうし」と読む。二週間かけて「家畜人ヤプー」を読み終えたところで、同じく人体改変ネタ満載の同書が発行されたのも何かの縁か。駕籠真太郎の場合軍国物でも共産物でもSF物でもエロを目指したものでも、とにかくグロテスクな人体改変と際限なく増殖するパラノイア的妄想がギャグとして散りばめられている。臓器の描写や悪意に満ちた視点に嫌悪感を示す人には薦められないが、乾いた絵柄と論理的なギャグ構成と相まって残酷さはほとんど感じない。短編を多く物している駕籠氏としては珍しく、一本の長編として完結している本作。「超伝脳パラタクシス」ISBN:4087826724 同様読み応えは十分。天明の大飢饉を「人体徴税」で乗り切った天外藩。率いるは怜悧なサディストの沙霧姫。前半は人体徴税と地獄テーマパークというネタで引っ張るが、毛根を自在に操る毛根忍者が登場する後半からのドライブ感がたまらない。自在に針のような剛毛を生やして敵を倒したり、切断した手足の代わりに鞭のような毛を移植したりやりたい放題。なんというかあのキューティクル感も良い。巨大毛根といえばむかーしのログインで水口幸広が描いた漫画を思い出す。TRONの父、坂村健教授を揶揄した内容だったと思う。ぶっとい毛髪一本だけの人物が出てきて、その毛が抜けるともう脳味噌がじかに見えちゃってる(この人物のモデルも居たように思うが失念)。坂村教授が彼を追いかけるうちに、転んで脳髄をぶちまけて死亡……みたいな内容だった気が。いまだに肩とかに「ひょろ毛」を見つけるとこの話を思い出してしまってちょっと気持ち悪くなったりする。
(追記)スキャナで取り込んだカバー写真のタイトル文字などが目立たないのは、シルバーのインクで刷るという凝ったことをしている為。実物のカバーはもっとコントラストの高い目立つものです。