「金髪の草原」2000/日/94分

金髪の草原 [DVD]
to real,not to real?
20歳の自分という「夢」に生きる80歳の老人、日暮里(伊勢谷友介)。彼の家に訪れるホームヘルパーのなりす(池脇千鶴)もまた、血の繋がらない弟の丸男に密かな想いを寄せている。徐々に明かされていく舞台背景と人物のバックボーンから、現実を受け止めることの辛さと幸せに収束していくストーリーは切ない。世界は馬鹿馬鹿しくも冷淡で、自分という存在には確信が持てない。それでも現実感をもってこの世界を受け止めたい、そして世界から受け入れてもらいたいと願っている。
どうして人を好きになったら、その人にも好きになってもらわないと人は幸せになれないのだろう。生きているのは幸せだ、と確信した日暮里は死を恐れず空を飛ぶことができた。一方なりすは辛い現実を穏やかな微笑で受け入れることで未来を得る。犬童一心監督は日暮里となりすの紡ぎだそうとした夢の繭を、最後に軽やかにポンと割ってみせる。観客は夢の終わりを告げられる。自分は自分の対峙している世界になにを見て、なにから目をそらしているだろう。