「スチームボーイ」&「マッハ!!!!!!!!」

帰ってきた。札幌駅上のシネマフロンティアで見たんだけど、スチームボーイとマッハ!の券を買って万札出したらお釣りが七千円ってどういうことよ。受け取った釣りを無言で数えてたらカウンターの兄ちゃんも気がついて、もう千円渡してきたが。千円単位の足し算引き算くらいしっかりやっとくれ ┐(´д`)┌ 。日曜日で、夏休みで、映画サービスデーということで、館内は朝から人でごったがえし。こどもはポップコーンばらまくは、お父さんはロビーでビール飲んで出来あがっちゃってるはで、これはスタッフは大変。釣り銭間違いくらい大目に見るか(結構こだわってる)。
さて映画の感想。まずはスチームボーイから。下の囲みの中の文章はネタバレありなので、未見の方は注意されたし。

制作に入ってから何年も延々と作りつづけていた先入観があったので*1、内容も間延びしてるのかと思いきやさにあらず。アクションに次ぐアクション! 手に汗握る快作だった。もう蒸気が、バルブが、気化熱が、スチームボールってそんな安直でいいの? だってサッカーボールくらいの鉄球だよ?! キャラクターは制作途中の設定資料や予告編ではイマイチかなと思っていたが、声がついて作中で動き始めると意外と魅力的。クールな現代っ子を主人公に持ってきたのは大正解だったと思う。主人公のレイをあてた鈴木杏とヒロイン役の小西真奈美は、本人が出てる実写映画より良かったんじゃないか? しかし小西真奈美って本人は長身で落ち着いたイメージがあるけど、あんな小生意気なお嬢様然とした声も出せるのね。ただでさえ小西真奈美ファンな僕は、もうこれだけでスチームボーイに星二つくらい上乗せしちゃいます(w。ただし他のキャストについては俳優としてはキャリアも実績もある人たちなんだろうけど、この映画ではどうかなという印象。ことに祖父のロイド役の中村嘉葎雄のろれつが回ってないのには驚いた。まあ、あれはあれで年寄りらしくはあったが。
ストーリーは天才科学者一家親子三代に渡る愛憎劇。日本的な湿っぽさが無くて良い。爺さんは爺さんなりに、父は父、息子は息子でバイタリティに溢れてるのも好印象。なんとなくジョジョジョースター家を連想した。思想は違えど受け継がれる血は信じているあたりとか。それに制作に9年もかけたわりに、舞台設定が現在の世界情勢にマッチしてたのも先見の明があったというか皮肉というか。グローバリゼーションと国民国家の戦い(変質)というテーマ。特にどちらが愚かしいとか優れているとか説教くさいことを言わないのもグッド。あえて言えばモラル無き科学者の暴走を戒めてるわけだけど、それは蒸気玉がぶわーっ蒸気城がどーんってゆーのをやりたかっただけの大友監督、自分自身に対するセルフパロディですか?(w。資本主義の尖兵であるアメリカのオハラ財団って、名前だけだとアイルランド系だね(風と共に去りぬ)。ユダヤアイルランド人とかそういう裏設定でしょうか(ヒロインの名前をスカーレット・オハラにしたいという、さぶ〜いオヤジギャグのためだけなんだろーか)。
ストーリーや設定に瑕疵やツッコミどころは満載だけど、最期まで十分楽しめた。1800円払って見てても後悔しなかったと思う。ラスト近くでスチーム城の遊園地ギミックが動作するのもね……ロボットカーニバルのオープニングで衝撃を受けた中坊だった僕としては、感動してしまったですよ。白旗。

てなとこで疲れたてきたので、「マッハ!」の感想は一休みしてから。とりあえずここまでで日記にアップしておく。
(小休止)
さて、続き。「マッハ!!!!!!!!」。はてなのキーワードにあわせて書くとエクスクラメーションマーク多すぎ。

キックの鬼(違う)トニー・ジャーの体技だけで星五つ。カメラもストーリーも音楽*2も小憎らしいくらいまとまってるし、アジア映画にありがちな文化が理解できぬ故の置いてけぼり感は微塵も無し。ツッコミどころは満載だけど、そこは気にしない方向で(特に悪党一味の白人ボスはなにかのパロディなんだろうか)。まずはムエタイのスピードに驚愕。技をスローモーションで見せてからもう一度同じカットをつないで次のシーンへ、って延々とアクションシーンは続くが、全然飽きない。ヒジ、ヒザ連打、フェイントやジャンプから頭部へハイキックってこれは強い。つか痛い。脳天肘打ちはヤバイよ。血が飛び散ってたけど、あそこだけはフィルムにペイントしての特撮かなあ。ムエタイが立ち技最強説があるのも肯ける。格闘技やってる人にはもう堪らないんだろうな。そういや観客にも妙にガタイの良い兄さん三人組みとかが多かった。レンタルビデオは見ても、普段映画館までは来なさそうなタイプ。そうしたお客さんまでクチコミで評判が広まればかなりのヒット作になりそうな予感。
トニーは最初はなんだかカエルみたいな顔……とか思ってたのに、だんだん男前に見えてくるから不思議。演技はアレだが怒りの表情に痺れた。エンディングのNGカット集の笑顔も良く見えるから不思議。童顔だし、ジャニーズファンのオネエ様たちには意外とイケルかも……。トニーの相棒役のペットターイ・ウォンカムラオは演技面では完全に主役食っちゃったね。コメディリリーフかと思いきや、ラストのあの男気。脇役も妙に上手いし味があって良い。特にお気に入りは闇格闘技場のリングアナ。トニーが勝利した後、タイミング良く賭場の取り締まりに警察が踏み込んでくるシーン。「ミュージック♪」って軽く合図してリズム取りながら、場を仕切りに去っていく。格好いいよアンタ。
物語のテンションは中盤の闇格闘技場での勝利で一度マックスに達する。タイ名物の三輪タクシートゥクトゥクでのカーチェイスは、熱い展開だけどこの映画でなくちゃ見れないというものではない。それでもカーチェイス最期の爆発炎上シーンで観客が沸いたのはどう見ても「西部警察」だったからだよなあ(w。その後の孤児の少女と姉にまつわる展開はちと微妙。個性豊かな闇格闘技場の敵役に比べて、雑魚敵が大勢で襲ってくるパターンばかりが繰り返されるし。敵ボスの用心棒との八百長試合も(八百長だけに)爽快感には欠けるしね。まあストーリーを云々する映画じゃないか。単調だけど破綻は無い。あと予告で「CGは使いません!」とぶち上げてるのは確かにそのとおりだが、爆発シーンなどで使ってる人形はもう少し何とかしようよ。う〜、これもこの映画の魅力とは関係ない部分だけど。どうなんだろ、監督には人形の代わりに(アクション以外の部分で)CGを使うという選択肢はあったはず。やはりウリとしてCGは完全排除という方針を立てたのだろうか。とにかく書いてると切りが無い。これも1800円払っても損しない映画だった。今日はサービスデーなんだし、軽く見たことを後悔するような映画見とくんだったよ……。

あと、なんだ。トニーと用心棒のラストバトルで、用心棒がドーピング注射を服の上から五本射しするの見て「あっイリヤだ」と思った。とか書いとくとラノベオタの皆さんも釣られて見に行ってくださったりはしませんか?

*1:なにせ1997年に押井守の「G.R.M.」と一緒に制作発表されたんだものなあ。バンダイビジュアルのデジタルエンジン計画。その後「G.R.M.」はパイロットフィルムのみ残し制作中止。「AVALON」に成果は引き継がれたってことになってるけど。

*2:妙にテクノやトランスがハマってると思ったら、監督のプラッチャヤー・ピンゲーオはミュージックビデオ出身なんだね。