死者の話をすると死者を呼ぶ

不謹慎の謗り(そしり)を受けることを承知で書くが、足立区の新聞販売店寮でダンボール箱に入った半裸の女性の死体が発見された事件は想像力を掻き立てる。今朝5時に目が覚めて、寝ぼけてニュースを見ている時に第一報を聞いた。そのままウトウトしてしまい、頭の中で妙なストーリーが作られた所為もあるらしい。引越しの荷物として運び込まれた死体は、人間の肉体が物として扱われうるという事実をずいぶんあっさりと示している。大型テレビの箱に入っていたというのも、合理的というしかない。大塚英志が「多重人格探偵サイコ」で宅配便で送られてきた瀕死の恋人という話を書いていたが、フィクションよりも即物的な印象を受けるのは現実にはあまり作為が感じられない所為か。止むを得ずそうした、みたいな気がする。狭い箱に収められた人体というのは、早すぎた埋葬とか、棺桶の不死者とか、卵生の英雄とか、うつぼ舟とか、鉄雄に潰されるカオリとか……まあ色々な連想が湧き出てくる。澁澤龍彦が胡桃の中の世界に拘っていたことをぼんやりと思い出した。
亡くなられたかたの霊のご冥福をお祈りします。