サマーウォーズ

これまで「夏」をモチーフに作品を手がけることの多かった、細田守監督が正面切って描いた夏映画、サマーウォーズ。公開初日の八月一日を用いたフックもあり、いま見てこそ良かったと思わせる。
舞台は信州上田の元武家のお屋敷。東京で冴えない夏休みを送っていた主人公健二は、憧れの夏希先輩に偽装の恋人役として連れてこられる。そこから始まる、大家族と世界を巻きこんだバーチャル世界の大戦争がこの映画のあらまし。
まず冒頭でOZと呼ばれる地球規模の仮想現実世界をテンポ良く紹介し、主人公とそこに関わることになる夏希の実家の大家族陣内家を整理して見せる構成が秀逸。現代とは少し異なる作品世界にスムーズに導入してくれる。
細田監督お得意の、CGを駆使したバーチャル世界の描写は、スマートで心躍る。特に今作では、アカウントを持つ住人一人一人が持つことになる、アバターと呼ばれる仮想の自分のキャラクターが個性的で面白い。妙にリアルで気持ち悪い、現実のセカンドライフや、PlayStation®Homeは是非とも見習って欲しい。
一方、バーチャル世界とは対照的に、しっとりとした色彩で描かれる現実世界の田舎の夏の情景は、細やかな背景美術と相まって郷愁を思い起こさせる。陣内家ほどではないけど、自分の両親も大兄弟で、子供の頃祖父母の家に集まった時など大家族の様相を呈していた。そうした記憶を呼び起こす映像は説得力があった。
映画はクライマックスに向けて、人と人との絆を再認識させるストーリーが紡がれる。ネタバレになるのであまり詳しくは書かないが、二,三度ほど涙腺がゆるみそうになった。目標に向けて人々が力を合わせる姿は美しい(こうしたストーリーにあまり感情移入できない人もあろうかとも思うけど)。
ともかく、自分にとっては今年一番の感動作になった。アニメーションならではの刺激的な映像表現と、奔放な発想をしっかりとまとめあげた脚本には敬意を表したい。さー、この映画は二度三度とこの夏観に行くぞー!