定型詩

諸事情により、ここ数年に書いた定型詩をまとめてみた。


【短歌】

……春

曇天にほころぶ気配梢手にしばし眠れときみは囁く

親指に目と口を描きコンニチハ桜花背にきみの微笑む

「花びらが」きみの髪の毛ふれる嘘両手このまま背中まわして

ナウシカのように生きよう」誓い合いわかれた春を汚す二人で


……夏

「いま見えた?」ケータイごしに話すきみ 東京湾岸遅れ破裂す

南口見下ろす街の炎天下 茶髪も禿も息つぎ泳げ

「アツイデショ」ヨウタ三歳蟻の巣を壊滅せしむノアの水筒

「ここからが新しい自分」と日焼け女日焼け領土宣言す

地下鉄の十三階段のぼるごと執行猶予の蝉のわななく

蒼穹に堕つるUFO幻視するバグダッドの少年の夏


……恋愛

白地図に色鉛筆で塗り分けるクラスメートの三角関係

告白の返事は夜のコンビニのアイスクリームの一番したに

花が咲きぽつぽつ玉に不意に落つ次は告げよう胸の熾火を

「一〇〇人の世界だったら耳たぶの隣どうしの細胞でいい?」

「落ちているあいだは丸い雨粒」とシーツをみだし丸くなるきみ

「あやまちをくりかえします」ぼくたちの壊れた恋を悼む黙祷

好きじゃ駄目愛してくれぬその人を愛すが故に我は悲しき

肩幅の未来に触れる勇気だけ呉れるあなたの名を囁く夜


……その他

「搭乗はノースロクロクロクゲート息は三分止められますか」

「名前とか覚えられない仕事でもだってパラサウロロフスなんて!」

大好きなあなたのあなたの幽霊をレンタルしますピピッて早く

肉体を離脱せんとす(まだ重い)想いが足りぬ(骨のしがらみ)

「野生では絶滅危惧種」叫ぶ声聞こえぬふりの悪役レスラー

年下のシリアルキラー愛用す髪絡まりし剪定鋏


【俳句】

見送りて通過電車の風涼し

見極めし影男の影炎天下

ぶきっちょの手をすり抜ける糸蜻蛉(いととんぼ)

取り込みし本温(ぬく)みたる土用干し


【川柳】

今日今日と明日は動かじウィンドウズ