「キューティーハニー」2003年/日本/93分

庵野秀明監督のメジャーな実写作品としては、「ラブ&ポップ」に続き二作目ということになるのかな。映画サービスデーとはいえ平日の朝九時の上映ということで観客は十人ほど。学生風の二人組みとか三十〜四十台の男性一人客とか。本編の上映前に「ポータブル空港」というPV風のショートアニメが流れた(右上に貼った画像参照)。なにかのプロモーションなのかと思ったらそうでもないらしい*1。3DCGをアニメ風に見せた三分ほどの小品。フューチャーレトロな世界設定と清潔で明るい絵柄が心地よい。音楽の中田ヤスタカcapsule)はハウス食品ジブリアニメCMの曲も手がけているそうで、監督の百瀬義行氏とのコンビの仕事の延長ということらしい。百瀬監督の「山田くん」や「ギブリーズ」の試行錯誤が実を結んだのかと納得。で、本編の「キューティーハニー」。

冒頭からタイトル、ゴールデンクローとの戦闘へと至る展開はスピーディーの一言。爆発炎上する海ほたる、統率されてる割にマヌケさがお約束な戦闘員達、CMでも見所として扱われていたハニーメーションも目に楽しめます。平松禎史アベノ橋フリクリカレカノ)のアニメーションパートもキャラが滅茶苦茶かわいいです。これから制作されるアニメ作品「Re:キューティーハニー」にも期待。みそっかすの派遣社員として日常生活を送る如月ハニーの設定は、女性の憧れの職業に“変身”するアニメ版ハニーのイメージからは外れるけど、ここは設定からバッサリ落とされた部分のようでがっかり。キューティーハニーへの変身以外には、変装ツールとしてしか能力が機能していないんですよね。その代わりストーリーを引っ張るのが、市川実日子演ずる公安の女警部との友情物語。かなりイタイ挙動の天然ボケアンドロイドをサトエリが体当たりで演じ、演技力では定評のある市川実日子が類型的なエリートキャラに肉体的説得力を吹き込むことで、稀有なバランスが成り立ったように思います。ありえないんだけどこういう女の友情もいいなあと、実は僕はこの二人の関係が一番楽しんで見れました(安いっちゃあ安いんだけど、いいじゃないくゎっ!)。周りを固める演劇畑中心の俳優陣も、漫画的な作品世界にマッチして“説得力ある虚構”を支えていたように思います。何度助けてもまたさらわれる甲斐性無しの博士を演じた京本政樹が、爆発の中で皆がうろたえてるのに一人平然と白衣の埃を払っていたりするのにややウケ。スカーレットクロー(新谷真弓)と万年係長(松尾スズキ)のフリクリコンビはガイナックスファンへのサービスかな。ブラッククロー役の及川光博はこの映画の中で一番役者として得をしてる人かも。存在感が十分生かされてるし、いきなり歌い出しちゃうし。あと市川実日子の白チャイナドレス&三つ編みロングヘアー&黒ブチダサメガネのいでたちで拳銃構える姿に萌え〜。彼女をはじめて見たのは小西真奈美目当てで見に行った「blue」という映画。確かに目の力は凄かったけど、田舎っぽいルックスの娘だなと思っていたら、こんな凄い演技力のある女優に成長するとは。エンディングテロップを見ると、いろんな人がカメオ出演していたらしい。僕はクルマに乗っていた永井豪先生くらいしか判らなかったけど……。平成ガメラみたいにカメオ出演がくどくなかったのはかえってよかった。映画としてはもっとオシャレにして若い女性を引き込んだほうが良いとか、原作や旧アニメの濃いファンには全然食い足りないとか、そもそもキューティーハニーという素材自体が知名度の割にファミリー向けじゃないとか難しい所はあると思いますが、爽快で明るい気持ちになれる映画として僕は満足できました。

*1:ポータブル空港」についてはここに事情が詳しい http://www.ntv.co.jp/ghibli/info_y2/#PORTA