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失踪日記
失踪日記イースト・プレス 吾妻ひでお ISBN:4872575334
ぼくと吾妻ひでおの出会いは中学時代。SF作家新井素子のエッセイ集『ひでおと素子の愛の交換日記』だった。可愛くデフォルメされた元祖文壇メガネっ娘素子嬢もよかったが、吾妻ひでお本人のハゲ頭のおっさんキャラが脳裏に深く深く刻み込まれた。その後ぼくは高校生になり札幌へ出て古本屋巡りを始め、吾妻ひでお作品を新しいものから順に古いものへと手に入れ始める。
ぼくの高校入学が1988年。吾妻ひでおが最初に失踪するのが89年の11月。ぼくの中では吾妻ひでおは知ったときから過去の漫画家だった。だって当時手塚治虫だってまだ連載を持っていたのに、吾妻ひでおの名を新刊で見ることは無かったから。その空白の時期に彼が何をしてどう生活していたか。それが全部実話として描かれている。それも絶頂期の吾妻ひでおよりもある意味シャープかつ軽やかになった線で。ページにコマがみっちり詰まっているから読むのにずいぶん時間がかかる。そしてそれだけの感慨を得ることができる。
数年前『ホームレス作家』という本が話題になったが、こちらのほうが遥かに凄みがある。ホームレス作家は単に金繰りに行き詰まって妻子を施設に取られ、自分はホームレスに身を落としながらも作家であることを辞めようとしなかったという話だ。しかし吾妻ひでおの失踪には理由が無い。強いて言えばギャグ漫画家という仕事に対する行き詰まりなのだろうか。そしてその壮絶な内容は実際に本を手に取って読んでみてほしい。損はさせない*1

*1:この本には「裏失踪日記」というインタビュー記事も載せられている。本の中をよく探してほしい。