昨晩の話

ジムで使うためにタオルをだしたら端のほうに安全ピンが留めてあった。小ぶりでちょっと表面の曇った、使い古した感じの安全ピンである。実はこのタオルに安全ピンが留めてあったのはこれが三度目である。そのたびに外して工具などを置いてある棚にしまうのだが、いつのまにか同じタオルの端のほうに留まっている。
これまでさほど気にしていなかったが、三度目ともなるとちょっとは気にかかる。ジムの後タオルを洗い物かごに放り込み、安全ピンが棚にあることを確認して眠りについた。そんなところに気をやったのが返って良くなかった。なかなか寝つけず屋根のピシリと鳴る音を数えていたら、不意に横になって寝ていた背中に人の気配を感じた。そのままだと金縛りに遭うのは確実なので、思うように動かない手でなんとか体を起こし大きく息を吐いた。さすがに気味悪く、明りとラジオをつけその晩はまんじりともせず明かした。
翌朝タオルを洗濯し、棚の安全ピンを確認したが特におかしいところはなかった。また忘れたころにピンが留まっているのを見つけるのだろうと思う。