「フューチャー・イズ・ワイルド」 ドゥーガル・ディクソン&ジョン・アダムス ダイヤモンド社 ISBN:4478860459
ドゥーガル・ディクソンの著作「アフターマン」「マンアフターマン」で、人類文明滅亡後の生態系をビビッドに見せられて衝撃を受けた僕は、それ以来この人の名前を気にしていた。待望の新刊がやっと出た。比較的近い未来の生態系を扱っていた前著に対して、今回はタイムスパンを大きく取っていて、最終的には2億年後の地球までシミュレートしている。
過去に遡ってみると、中生代末の恐竜の大量絶滅が起きたのがたった6500万年前だ。それまで小さなネズミみたいな生き物だった哺乳類が、地上のニッチのほとんどを占めるまでに適応放散するのに1億年もかかっていない。それだけ大きな時間を捉えるには、地球自体の進化も視野に含めなければならない。地球温暖化がさしせまった問題となっているが、今後500万年をかけて氷河時代はピークを迎える。北半球のかなりの部分は氷河に覆われ、海水面が下がる影響で地中海は干上がる。2億年後には地球の大陸が再び一つの大きな超大陸「第二パンゲア」に変貌しているなど信じられるだろうか。
こうした大胆な仮説を検証しながら、その時の生物のあり方を緻密に組み立てていくこの本は、結果として奇想に満ちた生物進化の到達点を見せてくれる。ハチドリのように羽ばたいて空を飛ぶ魚、分厚い皮膚に身を包み砂漠を駆け抜けるカタツムリ、地上に上がった体重8トンの巨大イカ……。空想力というのはこういうことを言うのだろうと、センスオブワンダーを満喫できる一冊。
さて、この本を下敷きに同名のテレビ番組も制作された。日本でもディスカバリーチャンネルで放映され、先月の3日にNHKでもダイジェスト版が流されたとか(はらぐち氏が見たのはこれですね?)僕もネットに流れていた映像を見つけて観てみた。本で口絵に使われているCGが動いている! 映像で観るほうが断然いいです。妙に安っぽいCGだと思っていたら、映像ありきで制作されていたのか……。でも内容の理解を深めるには本のほうがいいですね。
人間以外の種族が主人公の遠未来ファンタジーの構想を暖めていたところだったのですが、これは影響されちゃうな〜。(22:50)