犀の角

daicon

あらゆる生きものに対して暴力を加えることなく、あらゆる生きもののいずれも悩ますことなく、また子を欲するなかれ。況んや朋友をや。犀の角のようにただ独り歩め


交わりをしたならば愛情が生ずる。愛情にしたがってこの苦しみが起こる。愛情から禍いの生ずることを観察して、犀の角のようにただ独り歩め


朋友・親友に憐れみをかけ、心がほだされると、おのが利を失う。親しみはこの恐れのあることを観察して、犀の角のようにただ独り歩め

  *

仲間の中におれば、休むにも、立つにも、行くにも、旅するにも、つねにひとに呼びかけられる。他人に従属しない独立自由をめざして、犀の角のようにただ独り歩め


仲間の中におれば、遊戯と歓楽とがある。また子らに対する情愛は甚だ大である。愛しき者と別れることを厭いながらも、犀の角のようにただ独り歩め

  *

実に欲望は色とりどりで甘美であり、心に楽しく、種々のかたちで、心を撹乱する。欲望の対象にはこの患いのあることを見て、犀の角のようにただ独り歩め


これはわたくしにとっては災害であり、腫物であり、禍であり、病であり、失であり、恐怖である。諸々の欲望の対象にはこの恐ろしさのあることを見て、犀の角のようにただ独り歩め


貪欲と嫌悪と迷妄とを捨て、結び目を破り、命を失うのを恐れることなく、犀の角のようにただ独り歩め

  *

もしも汝が、賢明で協同し行儀正しい明敏な同伴者を得たならば、あらゆる危難に打ち勝ち、こころ喜び、気をおちつかせて、かれとともに歩め。


われらは実に朋友を得る幸せを讃め称える。自分よりも勝れあるいは等しい朋友には、親しみ近づくべきである。このような朋友を得ることができなければ、罪過のない生活を楽しんで、犀の角のようにただ独り歩め



『スッタニパータ』 第一章の三 「犀の角」 より