「クビシメロマンチスト―人間失格・零崎人識」講談社 西尾維新 ISBN:4061822500

クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識 (講談社ノベルス)
図書館から借りてきて読了。今日返却。続きの巻はすでに借りられていた。一作目の「クビキリサイクル」よりもミステリーっぽさが薄いと思いながら読んでいた。主人公の自虐的な独白が延々と続き、キャラクターに同調してしまうタイプの読者はウツになっちゃうんじゃないかと心配するほど。ヒロインの名前の葵井巫女子(あおいい・みここ)とか女性刑事の佐々沙咲(ささ・ささき)など、独特の命名センスは面白い。すくなくとも登場人物が多い小説だと人間関係の把握で疲れてしまう、記憶アタマの弱い僕は助かった。
西尾維新作品を読むのは二作目だが、なんとなく氏の執筆手法がつかめてきた気がする。漠然とした舞台設定がまずあり、そこで非常に危ういバランスで成り立つトリックを考案する。そのシチュエーションを支えるキャラクターを演繹的に作り出す。キャラクターを徹底的につくりこんだ上で、読者に対するミスリードも含め構成を練る。使うかどうかわからない世界設定もちゃんとやっつけとく。とまあこんな感じなのかな。
しかもここまでの手順は言ってみれば前提で、作者が書きたいのはその間を埋める膨大なテキスト。ペダンチックで時として書きなぐってるんじゃないかとすらすら思えるフレーズの群れ。西尾維新流に言えば“戯言(ざげん)”ということになるのだろう。これにはまれるかどうかでこの作品と作者に対する評価は180度分かれるだろうと思う。僕は読み物としては十分楽しめた。しかし、物語の展開やプロットを重視する読み手なら本を地面に叩きつけるかもしれない。美少女ゲーム調のカバーイラストが読書の大きな助けになっていることが理解できるような、シチュエーションとキャラクターで読み込んでいく素養が必要とされるのだろう。
トリックについては前作の方が僕は好み。あーでも、学生時代の人間関係なんて“密室”みたいなものかもしれませんね。あとこの表紙はネタバレだよなあ(二文字白文字)。