良いものを読ませてもらった。「怪」誌に連載され、二〇〇〇年に出版された本の文庫化だから、水木しげるの最近作。練達の絵に深くてユーモア溢れる内容。この方が存在してくれているだけで、歳を取るのがすこし楽しくなる。神学者スウェーデンボルグ、チベットの高僧ミラレパ、ブードゥー教の聖人マカンダル、鎌倉時代に生きた明恵上人の四人を描いている。神秘家、オカルティストとというと怪しげな人物と思われがちだが、水木翁の手にかかると妖怪の側から見た哀れな人間のようにも見えてくるからおもしろい。単行本では三巻まで出てるそうだけど、これは文庫で手軽に何度も読み返せたほうがいいかな。フハッ。