「銀色の髪のアギト」 2005年/日/95分

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今年最初の長編アニメ映画鑑賞。最初に結論を言うと、思ったより良かった。それでも百点満点中四十点。チケット代もモーニングショーで見た千二百円が妥当という感じ。ラノベヲタ的には、緒方剛志のキャラが滑らかに動いてるのを見られただけでグッジョブ。テレビアニメの「ブギーポップは笑わない」で納得がいかなかった向きには一見をお勧めする。最近の映画ではめずらしく、アヴァンタイトル無しでいきなりオープニングが始まるのだが、ここで流れるKOKIAの歌が良い。世界背景を説明するダイナミックな映像とのマッチングも最高で、期待感を高めてくれる。ここだけでも映画館の大きなスクリーンで観た甲斐があった。(以下ネタバレ)

まずSF設定が大味なのはいいとして、既存のメジャーな作品の印象が強すぎてせっかくのオリジナリティが薄くなってしまっている。ことにキャラクター配置とストーリー展開にそれが顕著で、早い話が「ナウシカで始まり、ラピュタはあったんだ!と思ったら、実はスチーム城でした……」みたいな感じ。中盤、ヒロインが主人公と引き離されるまでの展開はさほど無理がなかっただけに、後半の詰め込みすぎな展開にはがっかり。
過去の世界からやってきたヒロインの心情には共感できるところもあり、小道具としての携帯端末の使い方も悪くない(なぜ文明の崩壊した未来世界でも通信機能などが使えるのか、などの粗はツッコまないとして)。十五歳ですでに自立している少年という主人公のキャラクターも、印象は薄いけど嫌味がなくて良い。やはり問題は後半で、意思を持った「森」の力で「強化体」という出鱈目な強さを手に入れてからの展開がマズイ。ヒロインを追いかけるという目的を遂行するための機械になってしまって、主人公としての“動機”が全く感じ取れなくなってしまった。この点でこの映画は失敗作になってしまっている。森の意思と主人公の動機をすり合わせるためのキーワードとして「銀色の髪」という設定があるのだろうが、それが上手く伝わってこなかったことが残念だ。
あとは愚痴というか、重箱の隅つつき。俳優を起用した声優陣は総じて悪くなかったけど、ハジャン(サングラスのおっさん)役の布川敏和だけは謎。下手な上に話題作りとしても意味があったのかと……。ヒロインの宮崎あおいと主人公の勝地涼は違和感無し。古手川祐子は上手かった。敵役のキャラを演じていた遠藤憲一という人ははじめて知ったのだけど、低い声がカッコいい! Vシネとかが主な活躍の場なのかな。この人はチェック。
SF設定には色々不満があるのだけど、これはノヴェライズを読めば納得がいくのだろうか。終盤の移動要塞とか無意味に多脚な戦車とか大きいだけで飛びそうにない砲弾とか、絵的に嘘をついている部分は許すとして、森のもたらした世界の荒廃と強化体になることで森とリンクする意識という部分については決着を見せて欲しかった。あと、森の水にすがって生きる人々という設定はなかなか興味深いだけに、なぜ材木として利用しないのかとか、果実などは採取できないのかとか、凶暴な森を武器に使わないのか(ナウシカだw)とか、その辺もなんとか一つ。