Quartett! 体験版」 AVG(18禁) リトルウィッチ http://www.littlewitch.co.jp/
2004年4月23日発売予定のWindowsアドベンチャーゲームの体験版。一昨日ダウンロードしたものをようやっとインストールしてみた。前作「白詰草話」で打ち出したフローティングフレームディレクターシステム(FFD)がより洗練された形で搭載されている。小説的な文章をマウスの左クリックで区切って読ませる一般的なアドベンチャーゲームとは異なり、コマ割りされた画面に登場人物のフキダシがポップアップすることで表現される。アニメーションと漫画とチャットの融合のような感覚は新鮮。普通の漫画であればコマ割りで表現するしかないところを、加えてコマの動き、フキダシの動きを時間で制御可能なこのシステムは、漫画家に映像の演出家としての素養も求めるものだ。おそらくアニメーションの制作工程と同様にシナリオをあげた上で絵コンテを書いているのだと思われる。通常のAVGであればテキストと画像、音声のリンクを取れば良いスクリプト編集の作業は、恐ろしく複雑なものになっているだろう。
僕はフキダシの入った自主制作アニメーションの企画を考えていたことがあって、FFDシステムをはじめて見たときにはAVG側からこういう発想が出てきたか、と思ったものだ。アニメーション側の視点からこのシステムを見ると、重層的にコマを割って見せる面白さはあるけれど(ガンダムの画面分割をもっと進歩させたみたいなものだ)、一つのカットごとのカット割りのダイナミズムは失われていて勿体無いと感じる。現在のシステムではマウスの左クリックはテキスト(フキダシとコマの進行)を進める役割と、要所で提示される分岐で選択肢を選ぶ役割しか担っていない。このマウスクリックを積極的にゲーム進行に介入する手段として用いることが出来れば、アニメーションには無いゲームとしてのインタラクティブな面白さを提示することが出来るのではないか。たとえば画面上に表示されているフキダシをクリックすると「心の中のセリフ」を表示するとか、カットの奥に居る人物をクリックするとその人物のアップのコマが表示されて、細かい表情を知ることが出来、シナリオの進行もその人物寄りの物が優先されるといったことが考えられる(そのクリックに導くために画面上にさらに表示要素を加えるのは、現在のシンプルで洗練されたシステムの美学からは逸れるかもしれないけれど……*1)。とまれ、ゲームならではの物語の深味を追求していただきたい。(23:20)

*1:いや、メニュー画面でStartかExitか選択させる際にマウスカーソルをかざすとぶわっと光の玉が湧き上がるようなエフェクトをかけている。本編でもそういう表現で画面上のスウィートスポットをマウスカーソルで探させればいいんだ。